司法書士とは?行政書士とは?違いを解説
司法書士とは
司法書士とは、司法書士法に基づく国家資格であり、登記・供託に関する手続の代理、法務局に提出する書類の作成、裁判所・検察庁に提出する書類の作成、これらに関する相談を行う資格です。
この中で、「不動産の権利に関する登記」及び「商業登記」の手続代理を中心的な業務としています。
そして、高齢化社会の進展に伴い、「成年後見制度」や「民事信託」などにおいても活躍の場を広げています。
さらに、認定司法書士になれば、簡易裁判所において弁護士と同様に裁判業務(訴訟代理業務)を行うことも可能です。
なお、この訴訟代理業務にスポットが当たったことで見落としがちなのが、裁判所提出書類作成業務です。従来から司法書士には、簡裁に限らず地裁でも高裁でも最高裁でも、本人訴訟を支援する形で裁判所に提出する書類の作成業務が認められています。
このように司法書士は、司法書士法第1条(司法書士の使命)に、”登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家”と規定されているように、法律に関する幅広い業務を行うことができ、弁護士のような敷居の高い法律家ではなく「身近なくらしの法律家」として、今、注目されている国家資格のひとつです。
司法書士試験
司法書士になるためには、司法書士試験に合格する必要があります。
ただし、一定期間、裁判所事務官・書記官や法務事務官、検察事務官などに従事し、法務大臣の認定を受けた場合は、試験に合格しなくても司法書士になる資格を得ることができます。
試験日程
司法書士試験は、年に1回、7月の第1日曜日に実施されます。「筆記試験」と「口述試験」の2段階あり、筆記試験の合格者のみを対象に口述試験が実施されます。
筆記試験 | 7月の第1日曜日 |
口述試験 | (筆記試験合格者のみ) 10月の平日に実施 |
試験科目
筆記試験は、午前の部が五肢択一式35問、午後の部が五肢択一式35問と記述式2問の出題となっています。
筆記試験の試験科目は全部で11科目あり、午前に、憲法・民法・会社法・刑法、午後に、不動産登記法、商業登記法、供託法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、司法書士法が出題されます。
口述試験の試験科目は、不動産登記法、商業登記法、司法書士法の3科目です。
試験区分 | 試験科目 | 出題形式・出題数 |
---|---|---|
筆記試験(午前の部) | 憲法、民法、商法(会社法)、刑法 | 五肢択一式(マークシート35問) |
筆記試験(午後の部) | 不動産登記法、商業登記法、供託法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、司法書士法 | 五択一式(マークシート35問)、記述式(2問) |
口述試験 | 不動産登記法、商業登記法、司法書士法 | 口頭による質問に対して口頭で解答(10問程度) |
受験資格
司法書士試験には、年齢・性別・学歴などの制約はありませんので、誰でも受験することが可能です。
難易度・合格率
司法書士試験の合格率は5%前後で推移しており、合格するには、最低でも3,000時間の勉強が必要といわれています。
行政書士とは
行政書士とは、行政書士法に基づく国家資格であり、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成や提出手続の代理・相談を行う資格です。
このような業務の中で、行政書士の最も代表的・中心的な業務は、官公署への許認可の申請業務です。
許認可の申請とは、例えば、建設業の許可や飲食店の営業許可、旅館業の営業許可、開発許可、農地転用許可、外国人在留許可、自動車登録申請・車庫証明などの申請業務が挙げられます。
行政書士は、その名のとおり行政手続の専門家であり、許認可のプロフェッショナルです。
行政書士試験
行政書士になるためには、行政書士試験に合格する必要があります。
ただし、国家公務員、地方公務員又は一定の独立行政法人の職員として、行政事務に20年以上(高卒以上の学歴がある場合17年以上)従事することによっても、行政書士の資格が取得できます。
試験日程
行政書士試験は、年に1回、11月の第2日曜日に実施されます。
試験科目
試験科目は、法令科目と基礎知識科目に分かれます。
法令科目は、憲法、行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする。)、民法、商法及び基礎法学の5科目あり、基礎知識科目は、一般知識、行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令、情報通信・個人情報保護、文章理解の4科目あります。
科目区分 | 試験科目 | 五肢択一式 | 多肢選択式 | 記述式 |
---|---|---|---|---|
法令科目 | 憲法、行政法、民法、商法(会社法)、基礎法学 | 40問 | 3問 (憲法1問・行政法2問) | 3問 (行政法1問・民法2問 |
基礎知識 | 一般知識、行政書士法等の諸法令、情報通信・個人情報保護、文章理解 | 14問 | -- | -- |
受験資格
行政書士試験には、年齢・学歴・国籍などの制約はありませんので、誰でも受験することが可能です。
難易度・合格率
行政書士試験の合格率は10%前後で推移しており、合格するには、500~800時間の勉強時間が必要といわれています。
司法書士と行政書士の違い
司法書士と行政書士は、いずれも「書士」という名前がついているため混同されることがよくありますが、その違いについて説明しておきたいと思います。
司法書士の仕事は、上記のとおり、登記・供託に関する手続の代理、法務局に提出する書類の作成、裁判所・検察庁に提出する書類の作成、簡易裁判所での代理人業務などです。
行政書士の仕事は、官公署に提出する許認可等の書類の作成やその手続の代理、権利義務又は事実証明に関する書類の作成などです。
これらの違いをひとことで言うと、作成する書類の提出先の違いです。
司法書士は、法務局や裁判所に提出しますが、行政書士は、官公署(国の機関や都道府県、市町村など)に提出します。
司法書士が法務局に提出する書類は登記申請書などで、裁判所に提出する書類は訴状などです。
行政書士が官公署に提出する書類の代表的なものは、許認可等の申請書になります。